アキバ系文化を語るキーワード: メイド喫茶


クイズ・メイド喫茶ってなあに

“メイド喫茶”とはどんな店のこと?

どれが正解?

  1. メイドさんみたいな服が制服になっている喫茶店のこと。
  2. 来店した客をメイドさんが「お帰りなさいませ、ご主人様」と迎える喫茶店のこと。
  3. メイドさんとゲームをして楽しむ喫茶店のこと。

 正解は1番です。店によっては2番や3番のような雰囲気のところもありますが、すべての店がそうではありません。特に、古くからやっている店は、普通の喫茶店と同じく客をちゃんと「お客様」と呼ぶところもあります。そういう店の方が好きだと主張する人も大勢いますし、私もその一人です。

どうしてメイドさんの服?

どれが正解?

  1. 機能的だから。
  2. 可愛いから。
  3. ムラムラするから。

 正解は2番です。理由はいろいろありますが(「メイドさん」の項を参照)、一番の理由は「可愛いから」に尽きるでしょう。給仕の機能性よりは、可愛らしさの方を重視した服装です。なお、ムラムラは困ります。メイド喫茶は18歳未満も対象にしている店であり、いかがわしいサービスを期待するような人は店から追い出されます。そもそも、法律で禁止されています。

メイドさんとおしゃべりできるの?

どれが正解?

  1. 客一人にメイドが一人か二人付いて、お酌したりおしゃべりしたり。
  2. ポイントカードを全部ためた人限定で。
  3. 忙しくない時に限り、簡単な世間話程度。

 正解は3番。メイド喫茶は近頃大人気なのでウェイトレスさんは大忙し。客とゆっくり話をしてる暇なんてあんまりありません。まあ、常連さんと短い時間話している姿は時々見かけることはあるけれど、基本的にはそういう接待を売り物にした店ではありません。

 なお、メイド喫茶は制服が可愛いだけの普通の喫茶店なので、店員は喫茶店の普通の接客や給仕の範囲を超えた、「客にくっついて談笑したりお酌する」「客と一緒にゲームをする」といった接待は法律上禁止されています(……ということは、先に挙げたゲームも厳密にはアウトですね。詳しくは後述します。まあ、ゲームと言ったって、黒ひげ危機一発とかダーツみたいに他愛のないゲームをやる程度で、大抵は健全過ぎるくらい健全なのですが)。

 “メイド喫茶はキャバクラ(女性が客のそばで接待する飲み屋)のおたく版”などと知ったかぶりする人も多いですが、両者はまるっきり異なります。ああいう女性の接待する飲み屋に行き慣れている人が言うには、「ただ制服が変わってるだけで、接待してくれるわけでもなく、いかがわしいサービスがあるわけでもなく、まるでつまらないではないか。何でこんなのが面白いんだ」。まあ、そんなものです。そういうのを期待して行く店では決してありません。メイドさんの扮装はあくまでも「おまけ」で、あとは普通の喫茶店です。

紅茶やコーヒーは一杯幾ら?

どれが正解?

  1. 400〜600円。
  2. 1200〜2000円くらい。
  3. 600円前後。加えて座席料が5000〜8000円/90分。

 正解は1番。紅茶やコーヒーは一杯400〜600円が相場です。店員さんの衣裳代がかかる事とか、観光地としてのプレミアを考えると、安い方ではないでしょうか。どうせ普通の喫茶店と大して変わらないのなら、平凡な喫茶店よりユニークな喫茶店も、たまには面白いのではないでしょうか。別に「メイドさん萌え」じゃない人でも、普通の喫茶店として使えますね。

 しかし、地価の高い秋葉原に、これまた高いメイドさんの制服。採算はギリギリと言われています。

女性客も入れるの?

どれが正解?

  1. もちろん入れます。
  2. 男性と同伴なら入れます。
  3. 残念ながら女子禁制です。

 正解は1番。実は、女性客も案外多いんです。特に制服のかわいさに憧れる人が多いようです。

18歳未満でも入れるの?

どれが正解?

  1. もちろん入れます。
  2. 成人と同伴なら入れます。
  3. 18歳未満は入れません。

 正解は1番。制服が可愛いだけの普通の喫茶店なので、もちろん18歳未満でも入れるし、時々子供連れも見かけます。今や、マニアだけが楽しむものではなく、新たな観光名所とみなされるようになり、幅広い層の客が集まっています。


“秋葉原には食べる場所がない”?

 「秋葉原には食べる場所がない」という不満を時々耳にするけど、それは探す努力が足りないだけ。肉料理なら「牛の万世」に、とんかつの「丸五」、「ラホール」「ベンガル」というカレー専門店。ラーメンなら「九州じゃんがらラーメン」や「がんこラーメン」、牛丼なら「吉野家」に「サンボ」。「かんだ食堂」「あきば食堂」という昔ながらの定食屋もあり、秋葉原デパートでだって食事できます。お茶を飲むなら「ルノワール」や「古炉奈」、他にもあちこちにあります。

 私は秋葉原に通い始めて十年近くになり、あちこちの店を知っているつもりだけど、それでもまだ一度も足を踏み入れたことのない食い物屋が半分以上残っているほど。結構奥は深そうです。

 しかし最近、秋葉原の飲食店事情がだいぶ変わりはじめています。一つは、秋葉原再開発に伴ってお洒落な店が増えたこと。最近できた「秋葉原駅前プラザビル」には、フランス風喫茶店の「Vie de France」とか、英国ヴィクトリア朝風のレストラン「The Rose & Crown」など、新しくてお洒落な店ばかり。「ヨドバシAkiba」8階には20店以上のレストランが。

 そしてもう一つが、今回の本題である「メイド喫茶」。「喫茶店の制服をメイドさんやアニメの扮装にしたら、なぜかウケちゃった」というわけで大増殖。「殺伐とした男臭いメカの街」である秋葉原に、「萌え」の旗印の下、女性的な明るい雰囲気のお店が増えています。これまで秋葉原に来ていた人々には、それを歓迎する層もあれば、違和感を感じる層もありますが、それはともかくとして、こういう店が増えてきたのは確かです。


老舗店に足を踏み入れる

 秋葉原に約10店あるメイド喫茶の中でも一番の老舗であり、オーソドックスな雰囲気を今でも保っているのが、「ガチャポン会館」6階にある「Cure Maid Cafe(キュアメイドカフェ)」。ここは19世紀の英国をテーマに、上品でクラシックな雰囲気で統一された喫茶店です。ウェイトレスの制服は昔の喫茶店みたいなエプロンドレスで、昔のメイドさんを思わせる服装であることが、“メイド喫茶”と呼ばれる所以(ゆえん)です。まるでメイドさんを主題にしたミニ・テーマパークみたいで、懐古趣味の私には、このレトロさが何とも嬉しいもの。

 私はこの店の存在は以前から知っていましたが、あまり興味がなかったため、長い間一度も足を踏み入れたことがありませんでした。しかし実際に行ってみると、店内は綺麗で上品な雰囲気。細かい事だが、ベランダに花壇があるのが、緑の少ない秋葉原には嬉しい風景で、心も落ち着くもの。

 もちろん、ウェイトレスさんの服が古風でユニークということを除けば、普通の喫茶店なので、皆さんも安心してください。おたくな客が多いことが気にならない方なら、女性や子供連れでも安心して入れる健全そのものの店です。

 この店だけの特徴として、毎週土曜日の夕方には、ヴァイオリンやフルートやハープの演奏会が開かれています。私が初めて行った日は、ちょうどハープ演奏会が開かれていました。演奏者もやはり例の古風なエプロンドレス。その日はかなり混んでいて待たされましたが、同じ待つにしても、ハープの音色を聞きながら待つことができるなんてニクいものです。

 “メイド喫茶”にはアイスコーヒーやアイスティーもありますが、できればホットティーを選ぶと良いでしょう。この場合、テーブルに来たウェイトレスさんが直にお茶をついでくれるので、まるで豪邸のお茶会の招待客になったようなリッチ気分を味わえます。もちろん紅茶は葉っぱから淹れた本格派。また、スパゲッティやハンバーグなどの軽食もあるし、ケーキなどデザートも実に充実しています。


メイド喫茶の「左派」と「右派」

 メイド喫茶や、メイド喫茶のファンには「左派」と「右派」があります。早い話が、「左派」が「軟派」、「右派」が「硬派」です。

 左派というのがテレビによく出る「@ほぉ〜む」みたいなソフトお色気&接待もどき路線。右派のメイド喫茶は残念ながらテレビにほとんど出ないので、あまりご存じない方も多いでしょうが、「Cure Maid Cafe」とか「Wonder Parlour」みたいな「制服が可愛いだけの真面目な普通の喫茶店」を真面目に楽しむ路線のこと。

 左派店舗と右派店舗とでは店の雰囲気もまるで異なります。おなじみ「お帰りなさいませご主人様」という挨拶は基本的には左派だけのもの。左派の好みとするメイド服は膝上丈のフリルたっぷりのミニスカート。右派は床掃除できちゃうんじゃないかと思えるほど長い“慎みの象徴”かつ“昔の作業着”である質素なロングスカート。左派はウェイトレス個人個人をアイドル的にひいきするようなファンが多いものですが、右派ファンは大抵、店の全体的な雰囲気とか紅茶の味など喫茶店としての基本事項をまずは重視します。

 「おかえりなさいませご主人様」という有名な挨拶や「メイドさんとゲーム」など、メイド喫茶に刺激を求める人は左派がお好みかもしれません。しかし、「普通の喫茶店みたいに、落ち着いた雰囲気でお茶したい」というのであれば、右派店舗をおすすめします。


上品に楽しむ鍵は店選びとイベントの確認

 さて、秋葉原には他にも“メイド喫茶”と呼ばれる店があるが、どの店も先に挙げた「Cure Maid Cafe」のように上品な雰囲気とは限らないことも、付け加えておきます。

 まず、ウェイトレスの服装が可愛いだけで後は安っぽい内装や雰囲気の店もあります。かつて、パイプ椅子に汚れた座布団という店もあったし、テレビにも出ている有名な店ですが、紙コップにティーバッグでお茶を出された店もありました。美味しいお茶を淹れるのが喫茶店の本分です。この基本を忠実に守ってこそ、メイドさんの“萌え”が引き立つものであり、“萌え”要素さえあればお茶や食事の味がまずくても許される、なんてことはありません。

 次に、“メイド喫茶”と名乗っていても、どの店も必ずしもクラシックな昔のメイド服をベースにした制服とは限りません。店によっては、ミニスカートだったり、アンナ・ミラーズの制服みたいに胸を強調したデザインだったりと、良く言えば現代風にアレンジされた服装のこともあります。テレビで放映されるメイド喫茶の大半は、なぜかこういうスタイルです。

 本来のメイド服とは、19世紀英国の、婦人の慎みというものを服装として表した、質素で慎みある作業服です。それに、メイドさんは決して主人より目立ってはいけない、飽くまでも陰で支える存在です。それから大きく逸脱するものは、いけないとまでは言いませんが、本来の意味での「メイド服」とは全く別物である事だけは覚えておいてください。「メイド服に標準なんてあるの?」と思うかもしれませんが、「セーラー服」とか「着物」に標準的なスタイルがあるのと同じです。セーラー服にカラーの線の色や本数などの小さな違いはあっても、ブレザーの制服をセーラー服とは呼ばないでしょう。着物に振袖か留袖かくらいの小さな違いはあっても、チャイナドレスやチマ・チョゴリはさすがに着物とは呼ばないでしょう。それと同じです。ミニの似非“メイド服”を、「絶対領域(スカートとストッキングの間の生足)に萌え」などと言ってもてはやす傾向が、たまにテレビで紹介される事がありますが、残念ながら?、本来の伝統的なスタイルには、そんなものはありません。

 それから、店によっては、夕方やイベントデーはメイド服でない別の扮装のことがあります。日替りとか週替り等で店員がアニメの登場人物等の別の扮装になりきるので、それはそれで面白いのですが、ごく一部の店では、レースクイーンやバドガールみたいなソフトなお色気路線の扮装を好む客を狙ったのか、露出度の高めなセクシーな扮装のこともあり、そんな雰囲気が好きでない人は注意が必要です。

 加えて、「メイド喫茶」を名乗っていながら、実際には喫茶店の範囲を大きく逸脱したキャバレーまがいの接待を行っている店もまれにあるので、注意しましょう。そういう店は大抵、値段が一桁余計にかかります(30分とか1時間で数千円というセット料金の事が多い)。本来メイド喫茶とはそういう店ではありませんし、ただコーヒーを一杯飲む程度なら400〜600円程度が適正価格です。

 また、“メイド喫茶”は制服が可愛いし、楽しく働けそうだから、と安易に考えて求人に応募するのは止した方が良いでしょう。「良い店は店に客が付くが、悪い店はメイドに客が付く」という言葉があります。応募するにしても、店に何度か足を運んで確認し、後者のような雰囲気の店は避けましょう。たまに、気に入ったウェイトレスを追いかけるストーカーがいるという話や、店によっては水商売的で上品と言えない雰囲気だったり、たまにズサンな経営で給料未払いという話も聞くから、慎重に判断すべきです。給料も水商売のバーみたいな高給を求める人には向いていません。一般的な飲食店並(時給800〜900円前後)ですので、本当に好きな人でなければ、あまりおすすめできません。

 “メイド喫茶”は私のように懐古趣味の人、メイド服の可愛さに憧れる人、アニメの扮装が大好きな人、と楽しみ方は十人十色です。しかし、雰囲気が自分の好みと合わなかったり、メイドさんに会えず別の知らないキャラクターでがっかりする前に、ウェブサイト等であらかじめ確認した方がよいでしょう。特に、「落ち着いた雰囲気の店で上品に楽しみたい」と思う人であるなら、下調べは非常に大切です。


“メイド喫茶”の法的問題

 2005年秋のこと、メイド喫茶ファンの間に激震が走りました。テレビで「メイド喫茶」が紹介されると決まって出てくる「メイドさんが客の近くにはべって談笑している」様子や、「メイドさんと客がゲームしている様子」、あれは風営法でいう「接待」に該当し、第2号営業許可(昔のカフェー、今では客の接待を行うバーやスナック、キャバクラ、ホストクラブ等が該当)を取っていないと、風営法に抵触するらしいということが話題になり、また実際に一部の店舗が警察から注意を受けることとなったからです。

 この騒動に乗じて「それ見ろ、やっぱりメイド喫茶なんて、いかがわしい店と一緒じゃないか」と中傷する人が一部に見受けられましたが、その主張は正しくありません。この機会に、どこからどこまでがメイド喫茶の営業として法的に許されているのかを解説します。

 「メイド喫茶」はキャバレーではなく、法的には通常の喫茶店です。だから、通常の喫茶店としての範囲を逸脱するサービスを提供する事はできません。制服がメイド服やエプロンドレスなのは昔の喫茶店でも時々あった事だし問題ありません。一部の店の「お帰りなさいご主人様」という挨拶は、奇妙ではあるけど、特に制限する法律もありません。

 しかし、「メイド喫茶」の店員が、もし通常の喫茶店の接客業務の範囲を超えて、特定の客の近くにはべって談笑したりお酌したりするならば、法律に抵触するのは事実です。

 誤解を防ぐ為に付け加えておきますが、テレビでメイド喫茶の様子を見ると、店員が客の近くに常駐して談笑したりゲームしたりしているように見えますが、それは演出です。実際には店員が客のそばに常駐しているわけではありませんし、全体の時間からすれば、店員が客のそばから離れている時間の方が断然長い。しかし、メイドさんが客と一緒にいる部分ばかり映され、客から離れている時間の様子が大幅にカットされると、あたかもキャバレーのホステスよろしく客にベッタリくっついているかのように見えてしまいがちですが、実際にはそんな事はありません。

 私は例のテレビによく出る店も含め、秋葉原のあちこちのメイド喫茶の様子を実際に見てきましたが、大体、こんなにメイド喫茶が流行っては、メイドさんも大忙し、客とゆっくり話してる暇なんてあまり無いのが現状です。もちろん、仕事が少ない時は常連客と話している様子を時々目にするものの、長くて数分の、しかも立ち話です。キャバレーみたいなのが普通の光景だと誤解されても困るので、一応付け加えておきます。

 話を元に戻しましょう。風営法での「接待」とは、具体的に何を指すのでしょうか。その運用基準が、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準の一部改正について(PDF)としてまとめられています。

3 接待の判断基準

(1)談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。
これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。

(2)踊り等
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、歌舞音曲、ダンス、ショウ等を見せ、又は聞かせる行為は接待に当たる。
これに対して、ホテルのディナーショウのように不特定多数の客に対し、同時に、踊り、ダンス、ショウ等を見せ、又は歌若しくは楽器の演奏を聞かせる行為は、接待には当たらない。

(3)歌唱等
特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくはほめはやす行為又は客と一緒に歌う行為は、接待に当たる。
これに対して、客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨し、又は不特定の客の歌に対し拍手をし、若しくはほめはやす行為、不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たらない。

(4)遊戯等
客とともに、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待に当たる。これに対して、客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとはいえない。

(5)その他
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のため必要な限度で接触する等の行為は、接待に当たらない。
また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。
これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たらない。

(赤字、緑字は筆者[押井徳馬]による)

 運用基準のうち、特にメイド喫茶に関係ある事柄を太字にしましたが、赤が基準に抵触する可能性のある事柄、緑が大丈夫と思われる事柄です。

 「特定少数の客の近くにはべり、継続して」かどうかが大きなポイントですが、前に述べたように、これに抵触する店は、私の知る限りでは、今のところほとんど無いと思われます。少なくとも、私はこんなサービスを受けた事などただの一度だってありゃしません。もしかしたら、店によっては店員と常連さんがデレデレしてる事もないわけではないのかもしれませんが(ただ、私はそんな様子を見た事はほとんど無い)、それでも、接待は店の業務ではありません。あったとしても、建前抜きで、店の業務を越えた店員の自発的な行動に過ぎないし、普通の客はそんな扱いを受けることはまずありません。

 一部店舗では、追加料金を払うとメイドさんとゲームできるサービスがあったり、「食べ物を一口目だけあ〜んして食べさせる」サービスを期日を限って行っていたりといったところもあるようです。しかし、前者の「ゲーム」と言っても、行っているのは一部店舗の話であり、しかも「黒ひげ危機一発」とか「ジェンガ」みたいな他愛のない健全なゲームです。些細な問題かもしれませんが、厳密な解釈をするなら法律に抵触する可能性があるのは事実です。後者については例外中の例外です。今のところ一店舗でしか話を聞いた事がありませんが、私個人としては、こういうサービスは喫茶店のサービスの範囲を超えてしまっているように感じます。

 つまり、「メイド喫茶」という形態そのものがいけないという意味ではありません。メイド喫茶がもし喫茶店としての範囲を逸脱して、過度に客と馴れ馴れしくするサービスを提供するなら、違法営業になる、というだけの話なのです。

 メイド喫茶が長く愛されるためにも、是非ともこの一線を踏み越えることなく、健全な営業を続けて欲しいというのが私の願いです。


(以下未稿)

“メイド喫茶”が秋葉原に残したもの


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