アキバ系文化を語るキーワード: 猫耳



どうして猫の耳が気になるのかニャ

なぜ猫の耳?

 秋葉原駅を出てすぐのところに、ユニークなキャラクターがトレードマークとなっているアニメショップがある。一見、エプロンドレスを着た可愛い女の子なのだが、何と、頭の上に猫の耳と大きな鈴が付いているのである。「デ・ジ・キャラット」、通称「でじこ」といって、秋葉原通なら知らない人はいないほど有名なキャラクターである。

 このように、漫画やアニメやゲーム等のキャラクターには、「猫耳」つまり人間の顔に猫の耳という組み合わせがよく見られる。具体的には、人間(や人間に似た容貌の妖精や宇宙人等)が猫の耳を模した頭巾や飾りを付けたり、あるいは顔はほとんど人間だけれど耳は猫のものが付いているという半獣半人もしくは猫の擬人化、というものである。

 しかし、「どうして猫耳がそんなに人気なのだろう?」と疑問を持つ人もいるかもしれない。実は同じ猫耳でも、作品によって、いろいろ違う起源や違う表現目的がある。


「妖怪」としての猫人間

 日本には猫をモチーフにした妖怪や怪談も多い。「化け猫」とか「猫又」の話は昔から有名である。

 現代においても、「猫目小僧」や「ねこ娘」をはじめ、猫をモチーフにした妖怪が漫画やアニメのキャラクターとして登場している。「猫目小僧」は頭の上ではなく横に鋭い耳が付いているし、「ねこ娘」は人間のような耳だが、ドラミちゃんみたいに赤いリボンが猫耳代わりと、どちらも厳密な意味での「猫耳キャラ」ではない。しかし、人間の風貌をベースにしながらも、猫のように鋭い牙を持っていたり、猫のような性格だったりする特徴があるため、猫耳キャラではないながらも、比較的似た特徴があると言える。

 実は、先に挙げた「でじこ」は、「外見は可愛らしい美少女だが、怒ると恐い」という設定であり、この部分はまさに「ねこ娘」に似た性格設定と言える。このように、「妖怪」としての猫人間キャラは、一部のアキバ系猫耳キャラの設定に直接あるいは間接に影響を与えているようにも思える。

 なお、アキバ系な漫画やアニメの世界にも、妖怪とか異星人の猫耳キャラがある。"Neko Mimi Mode"というユニークな主題歌で有名になった「月詠(つくよみ)」の主人公「葉月」は吸血鬼だし、「でじこ」は宇宙人である。ただし、どちらも元々頭から猫の耳が生えているのではなく、飽くまでも頭の飾りとして猫耳を付けているようである。


「猫の擬人化」としての猫耳

 一方、同じように猫みたいな人間みたいなキャラでも、妖怪でないものがある。一般的に「元祖猫耳キャラ」は、大島弓子の「綿(わた)国星(くにほし)」と言われているが、この作品こそ、その代表選手である。

 主人公の「チビ猫」は、大きくなったら人間になりたいという幼い夢を持つペルシャ猫という設定。人間の女の子のような顔に、猫である事のシンボルとして頭の上の猫耳、そしてペルシャ猫の綺麗な毛並は可愛いエプロンドレスに喩えて描かれている。つまり一言でいうなら「猫の擬人化」である。

 確かに、人間の顔に動物の耳を付けるというアイディアそのものは、「綿の国星」に始まったことではない。それは、古くは「王様の耳はロバの耳」という童話があることからもわかる。しかし、「猫の耳を付けた人間ではなく、猫の擬人化」、しかも「猫を直立させて服を着せただけの従来型の擬人化ではなく、人間に模して描いた擬人化」という点で、他にあまり例を見ない特異な作品であるし、この作品が有名になって以降、猫耳キャラというものが漫画ファンやアニメファンに親しまれるようになってきたのは、どうやら事実のようである。


「猫に化けた人間」としての猫耳

 スタジオジブリの有名なアニメ映画「猫の恩返し」にも「猫耳」が登場する。人間の女の子であるハルは、車にはねられそうになった猫を助けたお礼に「猫の国」へ連れて行かれるのだが、彼女はそこへ着くと猫の姿にされてしまう。猫の耳に猫のヒゲ、そして猫の手になってしまうのである。

 これはカテゴリ分けするなら、「猫の擬人化」とは似ているようで似ていない存在である。それはどういうことなのか、次の稿で説明する。


「タヌキのしっぽ」理論

 先に挙げた「綿の国星」のチビ猫と、「猫の恩返し」のハルは、どちらも人間と猫を混ぜ合わせたような風貌で描かれている。前者は「人間風に描かれているが、実態は猫である」ことを示すために、人間の顔や髪に猫の耳を付けている。後者は「猫風に描かれているが、実態は人間である」ことを示すために、猫の耳に人間風の顔や髪を付けている。

 要するに、日本の昔話に出てくるタヌキやキツネが人間に化けたところで、しっぽまでは化けずに残っているのと同じである。その“しっぽ”とは、実態が猫であるチビ猫の場合は「猫の耳」であり、実態が人間であるハルの場合は「人間の顔や髪」であるというわけだ。


「扮装」としての猫耳

可愛らしさの描写として

 

セックスシンボルとして

 


「可愛らしさの描写」か、「ペットとして飼育される存在」か

 


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