中高生の携帯電話考

2004/05/26

私の身近によく知っている、ある女子高生によると、その子は約四十人いるクラスの中で、唯一携帯電話を持っていないという。驚くなかれ、「唯一持っている」ではなく「唯一持っていない」なのだ。「クラスのみんなが持ってる」の「みんな」は二、三人ではなく、文字通り自分を除いた「みんな」なのだ。本人は本当は携帯が欲しいらしいのだが、みんなが持ってるからと云って慌ててうちも携帯電話を買うなんてことはしないのが、家族の方針だという。

まあそれにしても、高校生で本当に携帯電話が必要なのだろうか。古い思想だと笑え、しかし私にとって、携帯電話は高校生にとっては半ば贅沢品にしか思えない。友達とのおしゃべりごときに、毎月コンスタントに何千円も維持費のかかる機械を持つ事が本当に必要なのか、疑問に思えてくる。この「何もしなくても毎月必ず数千円以上の維持費がかかる」という点が、パソコンを中高生に買い与えたり(ただしインターネットは似た問題だろう)、小遣いからCDやゲームソフトを買うのとは性質が異なる問題であり、他の買い物と違って余計慎重に決定しなければならない問題だろうと思う。

もちろん、電車通学が必要なほど家から遠い学校に通っているなら、公衆電話の数も少なくなった今、携帯電話は重要な連絡手段になるだろうし、“中高生の分際は携帯電話など絶対持つな”と言いたいわけではない。むしろ問題なのは、「みんなが持ってるから」という消極的な理由だけで決して維持費の安くはない携帯電話を持つ事と、(迷惑メールで宣伝されている悪質サイトの不正請求や出会い系サイトのトラブルに巻き込まれる事等)携帯電話を持つ事のリスクと自己責任を自覚せずに使うことである。

高校生がオートバイに乗る事については、初期投資も維持費もかかる上に交通事故等のリスクのある乗り物であるだけに、中には校則違反にしている学校も多いほどで、先生も親も慎重である。私の通っていた高専では許可制で、交通安全指導には力を入れていたが、それでも毎年交通事故で亡くなる学生が一人か二人はいたのを思い出す。このリスクを理解しつつ、通学に必要などきちんと目的があって正しく乗る分には、オートバイも若者の便利で楽しい乗り物たり得よう。携帯電話はオートバイと違って、それが原因で人が死ぬことはほとんどないだろうが、しかし初期投資や維持費もかかり、リスクもあるという点は共通している。オートバイの時のせめて一割でもいい、慎重さがあってほしいものだと私は思う。

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