ある意味「気狂いにも公平な」インターネット(1/2)

2004/08/31

成程狸が狸なら、赤シヤツも赤シヤツだ。生徒があばれるのは、生徒がわるいんぢやない教師が惡るいんだと公言して居る。氣狂が人の頭を撲り付けるのは、なぐられた人がわるいから、氣狂がなぐるんださうだ。難有い仕合せだ。活氣にみちて困るなら運動場へ出て相撲でも取るがいゝ、半ば無意識に床の中へバツタを入れられて堪るものか。此樣子ぢや寐頸をかゝれても、半ば無意識だつて放免する積だらう。 ――夏目漱石「坊つちやん」。

半ばタブーにされてしまっている話題であるが、世の中にはいわゆる「気の触れた方」というのがいる。東京在住の方なら、「首相小泉純一郎は参議院選挙後、唯一神又吉イエスに首相の座を明け渡すべきだ。そう出来なければ、小泉純一郎は腹を切って死ぬべきだ。のみならず、唯一神又吉イエスは彼を地獄の火の中に投げ込むものである。理由は他人を殺すなら自分が死ぬべきだからだ。唯一神又吉イエスに投票しない有権者も同様である。詳しい理由は選挙公報等で熟知すべし。」という、何とも不気味な文句を選挙ポスターに書いていた今年の参院選候補者「又吉イエス」が比較的印象に残っているかもしれない。渦巻き模様に白装束で「スカラー波」攻撃を防げる、をはじめ、いろいろ奇妙奇天烈な妄想を主張していたある団体の教祖も去年話題になった。

ごく最近の事例でいうなら、アテネ五輪の男子マラソンで29日、「[キリストの]再来は近い 聖書」と書かれた紙を貼った出で立ちでコースに乱入してブラジルのバンデルレイ・デリマ選手を妨害したアイルランド出身の自称元司祭もその一人であろう。結局彼は逮捕され、この手の人に甘い日本と違ってちゃんと罰せられることになった。こちらは又吉イエスと違ってワハハと笑い飛ばせる問題じゃない。可哀想なのはこれでペースをすっかり狂わされてトップから三位に転落してしまったデリマ選手である。

普段、この種の気の触れた方が何を主張しているかについてメディアで紹介されることはあまりない。せいぜい、零細出版社から彼らの奇妙奇天烈な主張を載せた書籍が出版されることがたまにある程度だ(この種の本は「と学会」の「トンデモ本」シリーズに詳しい)。あとは参院選の選挙公報に又吉イエスみたいなのが載ることもあるが、候補者や党の主張をそのまま載せなくてはいけないと決まっていて、新聞社もそのまま載せる事にしている。

さてインターネットはというと、良く言えば全く自由に彼らの主張をウェブサイトで公開できる、悪く言えば全くの野放し状態、である。よく見かけるのが被害妄想系で、「電磁波によるマインドコントロール兵器の被害に遭っている」とか「誰々に執拗に嫌がらせを受けている」とか「ある店でひどい扱いを受けた」の類のトンデモ告発サイトは多い。これらは告発は告発でも、まともな告発サイトとは毛色が違う。読んでいてまともな人が書いてるとどうも思えず、事実誤認や辻褄が合わない部分があったり、「これは統合失調症の症状だろう」と思う部分があちこちにあるのがこの種のサイトの特徴である。自分こそ掲示板荒らしとか中傷などの迷惑行為を何十回も繰り返しているのに、それを棚に上げて他人を掲示板荒らし扱いしたり、些細な過ちを針小棒大に糾弾したり、根も葉もない悪質な噂を広めたりするような人もいる。

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