「おたく受難の時代」を知らない子供たち(2/2)

2004/10/10

チョコエッグに始まるフィギュアのメジャー化も意外なことであった。「フィギュア」という言葉が必ずしも美少女フィギュアを意味せず、大抵はコンビニのペットボトル飲料のおまけや懐古趣味者の大人向け食玩に付いてくる多種多様なジャンルのミニフィギュアを意味するようになり、部屋や車や会社のデスクの飾りとして一般化する、そんな時代が来るなどと誰が想像し得ただろうか。

そしてその次は“「萌え」文化のメジャー化”が段々進行し始めているような気がするのは私だけだろうか。「もえたん」と「わたおに」がamazon.co.jpの上位を占め、冒険心のある若いパソコン初心者が好んで買うパソコン雑誌「ネットランナー」に萌えキャラのトレーディングカードやフィギュアが付き、2004/09/12-11/07までイタリアのヴェネチアで開かれている「ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展」の「日本館」で「おたく:人格=空間=都市」という、良く言えば奇抜な展覧会が「独立行政法人 国際交流基金」による主催で開かれた上に、記念にとこれまた良く言えば奇抜なフィギュア付カタログが販売されている(悪く言えばどうなのかというと、eroticismに偏ったおたく文化の紹介による日本の恥曝しである、もとい、ご想像にお任せする)。ドル箱のおたく市場に経済評論家も注目している。

さて私はというと、その「萌え」文化が健全な「かわいい」という感情に基づくものなら大歓迎であるが、一方でこの現象を手放しでは喜べないのが正直なところである。まず、現在マスコミがおたくに注目しているのは、大抵は本当におたくに理解を示しているからではなく、単に奇異の目を向け「おたく市場は金ヅルだ」と注目しているに過ぎないことを、忘れるべきではない。だから、どこかで一歩間違うと、また手の平を返したかのように「おたくバッシング」が復活するだろうことは目に見えている。特に心配な要素として、この頃は「萌え」文化のうちエロ要素を絡めた分野ばかり特に強調されて宣伝される傾向が見受けられる。もし「おたくバッシング」が始まれば、これは格好の攻撃材料になり、結局、健全系専門に楽しんでいるマニアまでとばっちりを食らうのは火を見るよりも明らかである。

あの「おたく受難の時代」のトラウマを未だに引きずっていると言いたいなら言え。しかし世では「アニメや漫画など子供が見るもので、そんなのを大人げなく楽しんでいる大人は幼稚だ」という先入観は未だにしぶとく生き残っているし、「このようにおたくは幼稚だから、幼女に変な関心を持って誘拐したり猟奇殺人を行うに決まってる」などという勝手な妄想に結び付ける傾向もそうであるからこそ、心配が残る。あえて細かい事は言わない、しかしとにかく、同志諸氏には是非ともこの心配が杞憂となるよう賢明に行動していただきたい。

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