上品さと健全さを“メイド喫茶”に求めたい

2004/11/07, 13追加修正

「秋葉原には食べる場所がない」という不満を時々耳にするが、それは探す努力が足りないだけである。肉料理なら「牛の万世」に、とんかつの「丸五」、「ラホール」「ベンガル」というカレー専門店もある。ラーメンなら「九州じゃんがらラーメン」や「がんこラーメン」、牛丼なら「吉野家」に「サンボ」。「かんだ食堂」「あきば食堂」という昔ながらの定食屋もあり、秋葉原デパートでだって食事できる。お茶を飲むなら「ルノワール」や「古炉奈」がある。私は秋葉原に通い始めて十年近くになり、あちこちの店を知っているつもりだが、それでもまだ一度も足を踏み入れたことのない食い物屋が半分以上残っている。

「ラーメン屋や牛丼屋や定食屋ばかりで、お洒落な店がない」って? まあ、秋葉原はその昔、青果市場に来るおっちゃん相手の店が多かったからだろう。贅沢は言いっこなしだ。でも、そんなに言うのなら、値段の割にはリッチな気分を味わえる喫茶店を教えることにしよう。「Cure Maid Cafe」という名前の、いわゆる“メイド喫茶”である。

ここは19世紀の英国をテーマに、上品でクラシックな雰囲気で統一された喫茶店である。ウェイトレスの制服は昔の喫茶店みたいなエプロンドレスで、昔のメイドさんを思わせる服装であることが、“メイド喫茶”と呼ばれる所以(ゆえん)である。まるでメイドさんを主題にしたミニ・テーマパークみたいで、懐古趣味の私には、このレトロさが何とも嬉しい。

私はこの店の存在は以前から知っていたが、あまり興味がなかったため、一度も足を踏み入れたことがなかった。しかし実際に行ってみると、店内は綺麗で上品な雰囲気。細かい事だが、ベランダに花壇があるのが、緑の少ない秋葉原には嬉しい風景で、心も落ち着くだろう。まあ、ウェイトレスさんの服が古風でユニークということを除けば、普通の喫茶店であるから、皆さんも安心していただきたい。

毎週土曜日の夕方には、ヴァイオリンやフルートやハープの演奏会が開かれている。私が初めて行った日は、ちょうどハープ演奏会が開かれていた。演奏者もやはり例の古風なエプロンドレス。かなり混んでいて待たされたが、ハープの音色を聞きながら待つことができたのは、ありがたかった。

“メイド喫茶”にはアイスコーヒーやアイスティーもあるが、できればホットを選ぶと良いだろう。この場合、テーブルに来たウェイトレスさんが直にお茶をついでくれるので、まるで豪邸のお茶会の招待客になったようなリッチ気分を味わえるのである。もちろん紅茶は葉っぱから淹れた本格派、香りが違う。また、スパゲッティやハンバーグなどの軽食もあるし、ケーキなどデザートも実に充実している。

注意:上品に楽しむカギは店選びと日時

さて、秋葉原には他にも“メイド喫茶”と呼ばれる店があるが、どの店もここのように上品な雰囲気とは限らないことを、最後に注意しておく。

まず、ウェイトレスの服装が可愛いだけで後は安っぽい内装や雰囲気の店もある。どことは言わないが、パイプ椅子に汚れた座布団の店とか、紙コップにティーバッグでお茶を出された店もあった。

次に、「Cure Maid Cafe」を除く大抵の“メイド喫茶”は、いつ来ても必ずクラシックなメイド服の店員さんに出会えるとは限らない。店によっては、なぜかピンク色の服とか、スカートが膝丈より短くてふくらんでいるという、良く言えば現代風にアレンジされたメイド服のこともある。店によっては、夕方やイベントデーはメイド服でない別の扮装のことがある。日替りとか週替り等で店員がアニメの登場人物等の別の扮装になりきるので、それはそれで面白い。だが日によっては、レースクイーンやバドガールみたいなソフトなお色気路線の扮装を好む客を狙ったのか、露出度の高めなセクシーな扮装のこともあり、そんな雰囲気が好きでない人は注意が必要だ。

また、“メイド喫茶”は制服が可愛いし、楽しく働けそうだから、と安易に考えて求人に応募するのは止した方がいい。気に入ったウェイトレスを追いかけるストーカーがいるという話や、店によっては水商売的で上品と言えない雰囲気だったり、たまにズサンな経営で給料未払いという話も聞くから、慎重に判断した方がよいだろう。給料も水商売のバーみたいな高給ではなく、一般的な飲食店並であるから、本当に好きな人でなければ、あまりおすすめできない。

“メイド喫茶”は私のように懐古趣味の人、メイド服の可愛さに憧れる人、アニメの扮装が大好きな人、と楽しみ方は十人十色である。しかし、雰囲気が自分の好みと合わなかったり、メイドさんに会えず別の知らないキャラクターでがっかりする前に、ウェブサイト等であらかじめ確認した方がよいだろう。

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