“メイドさんブーム”考(1/3)

2004/12/27

メイドさんを題材にした漫画やアニメやゲーム、メイドさんのエプロンドレスを模した制服で給仕する「メイド喫茶」、最近はメイドさんと執事に扮して作業する出張クリーニングサービスまで登場している。世ではこれを“メイドさんブーム”と呼ぶようだ。つまり、メイドさんという存在に対する憧れの気持ちが、漫画や喫茶店の制服などといった形で表れており、それが人気を博しているのだ。

しかしこの様子を“わからん、メイドさんのどこが良いんだろう”と首を傾げながら見ている人も多いだろう。そこで早速、この秘密を解き明かすことにしよう。

あらかじめ断っておくが、私は、いわゆる“メイドさん”ものの作品とか“メイド喫茶”の類は、どれも良いものばかりと、盲目的に賛成するつもりはない。後にも述べるが、当然ながら、取捨選択する必要があるだろう。

まず、“メイドさん”のどこに憧れるかと聞くならば、恐らく十人に聞いて十人とも違った答えが返ってくるだろう。代表的なものを挙げてみる。

  1. ★西欧趣味
  2. ★豪邸暮らしへの憧れ
  3. ★メイドさんのいた昔の時代への興味、レトロ趣味
  4. ▲服装のクラシックな可愛らしさ
  5. ▲服装の上品さ、清純さ、ストイックさ
  6. ▼けなげに働く姿へのいじらしさ
  7. ▼hospitality(もてなしの精神)の美しさ
  8. ×主人への忠誠(自分に尽くしてくれたり、何でも自分の言う事を従順に聞いてくれたりする存在)
  9. ×主人と使用人の許されざる恋というシチュエーション
  10. ×清純さのタブーを侵す背徳感

まず、メイドさんにまつわる背景であるが、メイドさんブームのメイドさんとは単なるメイドさんではなくて、“19世紀の英国のメイドさん”のことか、あるいはそれをベースにしたものである。今の日本の女中さんや家政婦や仲居さんでもなく、「トムとジェリー」に出てくる「足だけおばさん(Mammy-Two-Shoes)」みたいな黒人のメイドさんでもなく、19世紀の英国のメイドさんみたいなのでなくては駄目なのだ。つまり多分に西欧趣味的な要素を持っている。考えてみると、たとえメイドさんに魅力を感じない人であっても、本で読んだり映画やアニメでしか見た事がないような、クラシックな豪邸での暮らしを一日でもいいからしてみたいと憧れる人は少なくないのではないだろうか。

服装の可愛らしさも、多くの人が挙げるポイントである。あのメイドさんの服装はよそ行きのドレスではなく、あくまでも家事を行う時の作業着だ。しかし日本のお掃除おばちゃんの実用一点張りの作業着とはまるっきり違って、ちょっと可愛らしさも兼ね備える作業着であるところが、何とも粋である。そして来客応対にも決して恥ずかしくない上品なデザインであり、かつては喫茶店やレストランのウェイトレスの制服も、19世紀の英国のメイドさんの制服に似たものが多かった。最近流行りの“メイド喫茶”の制服というものは、(正統派メイド服に限って言うなら)何も真新しいものではなく、ある意味懐古趣味、喫茶店の原点回帰と言えよう。実際のところ、“メイド喫茶”のウェイトレスは金の為というよりも、メイド服そのものへの憧れや、その扮装をみんなに披露できる楽しさの為に働いている人が案外多い。

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