“メイドさんブーム”考(3/3)

2004/12/27

とは言え、そういうメイドさんキャラクターに恋心を抱く人がいるのも、決して理解できないことではない。それも十人十色、いろんな動機があるだろうが、その一つとして、恐らく“メイドさん”は“汚れ無き乙女”の象徴なのではないだろうか。かつてはその“汚れ無き乙女”の象徴という役割は、昔の青春映画みたいに“セーラー服”によって表されることがむしろ多かったが、いかがわしい業界でさんざん誤用されたり、現役中高生自体の道徳の退廃が社会問題となった今では、そのかつての栄光もすっかり地に堕ちてしまっている。その点、“メイドさん”は、もはや過去の存在であるから、自分の憧れの女性(マドンナ)像に合わせて想像の翼を広げることができるのかもしれない。

このように、一口に“メイドさん”への憧れと言っても、実に様々な要素があることがおわかりいただけただろう。その上で、この憧れを、“メイドさん”ものの漫画を描いたり、メイドさんの扮装という方法で表現する人がいれば、“あの憧れのメイドさん”がいる喫茶店が流行ったりという昨今のブームがあるというわけである。“メイドさん”は“自分の言いなりにできる主人に忠実な存在”として男の征服欲を満たす存在だから流行るのだ、とか、それが証拠に“メイドさん”もの作品なんて、“変態の主人がお屋敷にメイドを囲って、主従関係をいい事に夜な夜なおしおきをする、の類”の作品ばかりだ、などと簡単に結論を出してしまう人もあるが、これは飽くまでも一部に関してであり、真実の半分しか伝えていない。そもそも後者については、おたく向け萌え漫画&アニメの世界でさえ、その種の方向性の作品は一部に過ぎず、むしろ「主人公のもとに突然、自分に忠誠を誓うメイドさんが転がり込んでくるが、自分の目下であるはずのメイドさんに主人公が逆に翻弄される」の類のラブコメが意外にも多いものである。さらに最近は森薫先生の漫画の影響とか、一部女性の間のロリータファッションブームもあって、正統派メイドさんの世界を上品に味わうというスタイルも特に女性を中心に段々流行りつつある。

“メイドさんブーム”は韓流ブームと並び、昨今の日本の社会現象として、結構奥の深いテーマであるから、もし興味のある方はもっと深く調べて、社会学の論文の題材にしてみるのも良いかもしれない。

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