顧客情報漏洩は今に始まった話ではない

2004/03/18

顧客情報漏洩そのものは、何も今に始まった話ではない。むしろ、これまで殆どニュースにならなかったという事の方が、全く不思議なくらいなのだ。

それも、社内にいる一部の者の犯行どころか、組織ぐるみで顧客の個人情報を名簿屋に売却している確信犯の会社など、あちこちにある。たとえば懸賞の応募だとかレンタルビデオの会員申込書などで収集された個人情報が名簿屋に流れることがあるというのは、裏事情をよく知る人たちの間では、ずっと昔から常識中の常識だった。

なぜ今頃になって顧客情報漏洩がこんなに大問題になったのか。これまではたとえ情報が漏洩したところで、どこかの会社がDMを送ったりセールス電話をかける等、多くは合法的目的に利用されてきた。ところが最近は、債権回収を騙った不正請求詐欺などに用いられる事例が明らかになり、そこでにわかにクローズアップされたというわけだ。そして今では個人情報を紙ではなく電子化して管理しているところが多く、そこと結び付けて報道されていることもあってか、余計に「新しい犯罪」というイメージで語られる事が多い。

最近問題になっている女の子を狙った痴漢も、何も今に始まったことではない。確かに何十年も昔から存在したものであり、私が小学生の頃、つまり二十年前も、地元で被害に遭ったという話をたまに耳にしたものだ。それから、我々小学生男子はというと、地元のその手の“名物おじさん”に出会うと変なアダナで呼んで挑発し、釣られて追いかけてくるおじさんから逃げながら更に挑発したりなどと、そのおどおどしたロリコンおじさんを散々いじめて楽しんでいた記憶がある。我々は当時、半分罪悪感を持ちながらそのおじさんをいじめていたのだが、今ではもしかしたら「よくやった。女性の敵に復讐してくれた」とザーマスおばさんたちに褒められてしまうかもしれない。それじゃこれで良かったのかというと、そうでもないだろう。もしかしたら我々がそのおじさんをいじめなければ子供と普通に接することができたかもしれないのに、我々がいじめたことが原因で、そのおじさんの性格がひね曲がってしまい、その捌け口が運動場の女子のブルマーを変な目で眺めることに向いてしまったのだったら、と想像すると恐ろしい。

閑話休題。地元で痴漢被害があると、注意を喚起する印刷物が学校から配布されたり、「ちかん注意」の立札が通学路に立てられたりするなど、地元では話題になったが、新聞には大抵ベタ記事すら載ることはなかった。殺されたりしない限りは、せいぜい「自転車泥棒」「空巣」程度かそれ以下の小さな扱いだった。それが今では全国ニュースで流れるようになったため、にわかにこの種の犯罪が増えたように思われるが、実際のところは、昔からあったがあまり大きく取り上げられなかった犯罪が、最近になって大きく取り上げられるようになったというだけの話である。

こういう「今に始まった話ではない」という事例は、他にもいろいろあるので探されたし。

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