これは、趣味で歴史的かなづかひをチョットだけ使ってみたいという方のための、一夜漬け――とまでは行かなくとも短期間で歴史的かなづかひを習得するためのアドヴァイスのページです。
「歴史的かなづかひは難しいです。言葉と音とが全く一致してないのですから」こんな言葉をよく耳にします。
実を言うと、私自身もつい2年くらい前までは、そのように思っていました。しかし、「丸谷君」という現代表記から正字正仮名(旧字旧仮名)表記への変換プログラムや、WindowsのIME用の正字正仮名入力辞書を手に入れたのがきっかけとなり、私自身も歴史的かなづかひに興味を持つようになりました。今ではかえって、現代表記の方が逆に違和感を感じるくらいで、「〜しましょう」とか「つまずく」を「〜しませう」や「つまづく」と直したくなるほどです。
私自身は歴史的かなづかひは全く読めなかったわけではなく、もちろん学生時代の古典の授業や、それ以外にも戦前に執筆された技術書で、戦後でも表記を変えずそのまま版を重ねていた本が図書館にあったりと、正字正仮名の文書を読むことが時々ありました。読むだけはおおよそ、難しい漢字は文脈から類推しながら、どうにか読めました。
しかし、「私に歴史的かなづかひなど読めはしても、書けるはずがない、」そう思い続けてきたのです。
ところが、自分が障害だと思っていたものは、実際には乗り越えなくてよいものだったと気付いたのは、2年前、ちょうど私が歴史的かなづかひの練習を始めた時のことでした――
文語体(文章向けの文体。〜たまふ、とか、〜けり、とか)や
その代わり、まずは私たちにもなじみ深い口語体で、歴史的かなづかひを書く練習を始めましょう。口語体で書くのに慣れてきて、もし余裕があるなら文語体とか候文にステップアップすればよいのです。
一、「しましょう」を「しませう」と書くこと。
二、「ちょうちょう(蝶々)」を「てふてふ」と書くこと。
この違いはどこにあるでしょうか? 答えは、一は大和言葉(和語)、二は漢字の音読みであるということです。
音読み漢字の歴史的かなづかひ(字音かなづかひ)というのは、漢字毎に読み方が違ったりと、大和言葉の歴史的かなづかひに比べると覚えるのに時間がかかるものです。 現に、戦前に育った日本人も、大和言葉の歴史的かなづかひは難なくこなせても、字音かなづかひにはだいぶ苦労したという人が多いそうです。
しかし、私たちはもう漢字を覚えてます。いちいち音読み漢字を平仮名で書かずとも、漢字で書いてごまかせばよいのです。
「〜の様(やう)に」のように和語化した音読み語も幾つか例外としてありますが、それを除けば、字音かなづかひは覚えなくてよい、は極論としても、後回しの後回しにして構わないと私は思います。必要があれば、辞書で調べればいいし、その必要というのも実際、ほとんど出てこないでしょう。歴史的かなづかひのうち、大和言葉だけに限定するなら、覚える量は皆さんが予想していた半分以下、ぐんと減ることになります。

というわけで、必ず全部が全部、昔の活字そのままの字体で書かなくてもよいわけです。活字体と筆写体が異なる文字を活字体で書くということは、ちょうどアルファベットの「a」を活字体そのままで書くのと同じで、かえって滑稽になってしまうこともあります。
まずは今の略字体をそのまま使って覚えましょう。それから正字体を少しずつ覚えていけばいいわけですが、ある程度の法則性もありますので、それをつかみながら覚えると早いでしょう。
ただし、このページの例文には、正字体をそのまま使っていますが、あまり心配しないで。あまり字体の変わらない字はすぐわかるでしょうし、難しい字はカッコ付きで略字体を付けてます。
現代かなづかいと歴史的かなづかひで綴りの違う言葉のうち、最も頻繁に使われる言葉です。
例)言ふまでもなく、先生の言ふことを聞くといふのは、いつでも言ふほど簡單でないかもしれぬ。
これも「いふ」に次いで頻繁に使われる言葉です。また、想像付くと思いますが、「いない」「いません」「います」は「ゐない」「ゐません」「ゐます」になります。
例)「太郎さん、ゐないの」台所にゐる花子さんは、太郎さんが去ったのに氣附いてゐませんでした。
これも比較的頻繁に使われる言葉です。例えば、「このような」は「このやうな」になります。
ただし、「しよう」「來よう」「あげよう」のように、「○○しよう」の「よう」は「よう」のままで、「やう」とは書きません。(明治の文豪ですら間違えることがあったほどで、昔の人もよく間違えてたみたいです)「よう」か「やう」か不安なら、簡単に見分ける方法があります。漢字で「樣」と書ける「よう」だけ「やう」、です。(また、漢字で「樣」と書ける「よう」はみんな漢字で書いて誤魔化す手もある……)
例)このやうな映畫(画)初めて見たワ、今度の日曜もまた來ようネ、と花子さんは太郎さんに言ったやうでした。(「やう」の部分だけは漢字だと「樣」であることに注目)
例)きっと、「これは夢だらうか」と言ふことだらう。
例)「よけいな事は考へるな」といふ考へは間違ってゐる。
ただし、漢字で「位」と書く「くらい」限定です。「暗い」は「くらい」のままなので注意。
例)どのくらゐできたかと、いちいち聞くくらゐなら、自分でやればいいのに。
「用いる」は「用ゐる」になります。これが原則ではありますが、「用ひる」と書くのも一応許容範囲です。「用う」は「用ふ」です。
例)どの方法を用ゐても良い、用ふことを怠るくらゐなら。
以下未稿。
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