私が金糸雀(かなりや)色の総武線の列車に乗つてゐたある日のこと。
座席には二人のお母様と三人の幼女が坐つてゐまして、その子供たちは首からぶら下げてゐるポケットピカチュウに興じてゐました。
そこまでは私もよく見かける光景なのですが、驚いたのはそれからでした。
そのお母様方は「昔やつてゐたはね、懐かしいわ」と言ひながら、子供等にこのキャンディ・キャンディのキャンディをやつてゐたのです。
キャンディ・キャンディグッズが流行つてゐたのは私が小学校に上がる前のこと。
当時は女の子のゐる家と言ひますと、襖や壁や箪笥にはよくキャンディ・キャンディのシールがベタベタ貼つてあつたものでした。
弁当箱や水筒や鞄や幼児用自転車まで、ありとあらゆるものがありました。
そんなキャンディ・キャンディグッズが、今時になつて、キャンディだけでも復活してゐたとは!
補足:後に知つたことですが、これらは原作者である水木杏子との契約を無視して、漫画家いがらしゆみこが勝手に商品化した、問題ありの商品とのことでした。
この件は未だに解決されてゐないとの事です。また、契約違反の版画を何十万円といふ値段を付けて暴利を貪るなど、トラブルも多々あるさうです。
作品自体は素晴らしいものでした。しかし今、このやうな問題でドロドロしてゐるとは、何とも悲しむべき事態です。